未来のコスト増に打ち勝つ!インフレ時代にこそ検討したい「変動型保険」の賢い活用術
- 西川 浩樹

- 3 日前
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昨今、私たちの生活を取り巻く環境は大きく変化し、多くの企業が「インフレ(インフレーション)」の影響を強く感じています。インフレとは、物やサービスの値段が上がり、結果として貨幣の相対的な価値が下がっていく状態を指します。デフレ(デフレーション)とは、この逆の状態です。
物価上昇の波は、企業の重要なコストである「人件費」にも深く関わっています。企業にとって、人件費は人材の確保と維持のために欠かせない費用ですが、一般的に、人件費は「上がれど下がらない」コストであると考えられています。特別な事情がない限り、一度上げた従業員の人件費を下げることは困難であり、維持もしくは増加していくコストと捉えるべきです。
迫りくる人件費上昇の現実
なぜ人件費は上昇しやすいのでしょうか。背景には、生産年齢人口(15~64歳)の動向や、賃金改定における物価動向の影響力の増大があります。
賃金改定の決定に当たり、企業が最も重視する要素として「企業の業績」と並び「物価の動向」が挙げられますが、この「物価の動向」を重視すると回答した企業の割合は、2003年の7.5%から2023年には27.1%へと大きく増加しています。これは、物価上昇が賃金に与える影響が無視できないほど大きくなっていることを示しています。
さらに、最低賃金も上昇傾向にあります。たとえば、全国加重平均で見ると、2005年の668円に対し、2020年には902円、そして2025年には1,121円まで上昇しています。このように、人件費は継続的な増加圧力にさらされており、企業は将来的に必要な人件費が増大するリスクに備える必要があります。
定額保険ではインフレリスクに対応できない?
企業経営において、経営者に万一のことがあった場合に備え、事業継続や人件費確保のための資金を生命保険で準備しているケースは多いでしょう。しかし、もし準備しているのが「定額保険」だった場合、インフレが進行すると、将来的に必要な資金が不足する可能性があります。
定額保険は、ご契約時に将来受け取る保険金額が確定している保険です。インフレが進み、物価が上昇して貨幣の価値が相対的に下がると、契約時に「必要な資金」として設定した保険金が、数年後には「必要な資金」に比べて相対的に目減りしてしまうからです。物価や人件費の上昇率によっては、保険金が確保されていても、その時点での必要な資金をカバーしきれない事態が想定されます。
インフレ対策の切り札「変動型保険」
このようなインフレによる資金の目減りリスクに対処するために、検討したいのが「変動型保険」です。
変動型保険(変額保険)は、契約者が払い込んだ保険料の一部を、国内外の株式や債券などを通じた運用(特別勘定資産の運用)に充てる仕組みを持っています。その運用実績に応じて、将来の保険金額や積立金額などが変動するという特徴があります。
この変動型の仕組みこそが、インフレ対策として機能する可能性があります。一般的に、定額保険に比べて、変動型保険はインフレへの感応度が高いと考えられます。運用がうまくいった場合、保険金額が変動し増加することで、インフレによって将来的に増加した資金需要(例えば人件費の増加分)をカバーできる可能性があるためです。
変動型保険は、将来の不確実なコスト増加に備えるために、既存の定額保険による備えを補完する対策として有効に活用できる可能性があります。例えば、コスト増加対策として逓増定期保険を活用し、これとインフレ対策としての変動型保険を組み合わせることで、人件費のリスクに賢くダブルで備える方法が考えられます。
経営者の万一と人件費リスクへの備え
中小企業において、経営者は売上の安定に直結する重要な役割を担っています。経営者が活躍することで、売上が安定し、それが十分な人件費の確保につながり、さらに優秀な人材の確保と企業のさらなる成長という好循環が生まれます。
しかし、重要な役割を担う経営者に万一のことがあった場合、この好循環は断ち切られかねません。
経営者の万一のときに起こり得ることの例:
トップセールスの不在や経営方針の迷走
取引先や金融機関との関係悪化
売上の低迷
人件費の確保が困難になる
優秀な人材の流出
売上のさらなる減少と企業の衰退
このリスクの連鎖を断ち切るために、万一の際に必要な資金を確保しておくことが不可欠です。この「必要な資金」は、インフレと人件費上昇によって将来的に増大する可能性があるため、変動型保険を活用した対策は、企業の衰退を防ぎ、事業を継続させるための重要な一手となり得るのです。
重要な留意点:リスクと費用について
変動型保険はインフレ対策として有効な側面を持ちますが、保険契約であると同時に、運用を伴うため、投資リスクがある点に十分な注意が必要です。
投資リスク: 特別勘定資産の運用は、国内外の株式や債券などの価格変動、為替変動の影響を受けます。これにより、損失が生じるおそれがあり、結果として保険金額や積立金額などが減少する可能性があります。
費用負担: 変動型保険では、保険契約に関する費用、運用に関する費用、そしてご契約を解約する際に発生する費用など、契約者が負担する費用があります。具体的な金額や計算方法が記載できない費用もあるため、事前に確認が必要です。
投資リスクの内容やご負担いただく費用は、商品によって異なります。商品をご検討いただくにあたっては、「契約締結前交付書面(契約概要・注意喚起情報)」「ご契約のしおり・約款」「特別勘定のしおり」などの書面を必ずご確認いただくことが重要です。
人件費の上昇が避けられないインフレ時代において、生命保険で備えるべき「必要な資金」もまた変動する可能性が高まっています。従来の定額保険に加え、運用実績に応じて保険金額が変動する変動型保険を組み合わせることで、将来のコスト増加リスクに、より柔軟かつ賢く備えることができるでしょう。企業の安定と成長を支えるためのリスク対策として、変動型保険の活用をぜひ検討してみてください。




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