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経営者の未来を護る!役員退職金準備のベストプラクティス徹底解説

  • 執筆者の写真: 西川 浩樹
    西川 浩樹
  • 9月10日
  • 読了時間: 7分

役員退職金の諸制度について解説

経営者の皆様、日々の事業運営、本当にお疲れ様でございます。

会社を成長させることに尽力されている一方で、ご自身の「未来」について、しっかりと準備できていますでしょうか?特に「役員退職金」は、従業員と比べて制度的な保障が手薄になりがちな重要なテーマです。

万一の事態が起こった際の残されたご家族への備えとして、また、勇退後の豊かなセカンドキャリアのための生活資金として、役員退職金の計画的な準備は不可欠です。しかし、役員退職金準備に活用できる制度は限られています。本記事では、限られた選択肢の中で、役員退職金を賢く準備するための主要な制度を詳しく解説し、皆様の最適な選択をサポートします。


1.なぜ役員退職金準備が必要なのか?

従業員には健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険、介護保険など多様な公的保障がありますが、役員には雇用保険や労災保険の適用がないなど、制度的な保障が少ない傾向にあります。

また、確定拠出年金や小規模企業共済など、役員退職金準備に活用できる制度は存在しますが、その数は限られています。経営者の皆様の「死亡退職金」は残されたご家族のために、そして「生存退職金」は勇退後の豊かなセカンドキャリアのために、重要な役割を果たすのです。計画的な準備なくして、もしもの時や勇退後に「こんなはずではなかった」と後悔することのないよう、今からしっかりと対策を講じましょう。


2.役員退職金準備に活用できる主な制度

役員退職金準備に活用できる主な制度としては、「確定拠出年金」「確定給付企業年金」「小規模企業共済」「生命保険」「銀行預金」などが挙げられます。これらの制度は、それぞれ異なる特徴やメリット・デメリットを持っており、ご自身の状況や企業の規模、退職金準備に対する考え方によって最適な選択肢は異なります。次章では、各制度の詳細を掘り下げて比較検討していきます。


3.各制度を徹底比較!賢い選び方

ここでは、各制度の具体的な特徴について、「概要」「拠出限度」「資金の自在性」「運営上の業務負荷」「運用利回り」「加入対象企業の規模」という観点から詳しく解説します。


(1)確定拠出年金

概要: 拠出された掛金が個人ごとに区分され、その掛金と運用収益の合計額をもとに年金給付額が決定される年金制度です。企業が掛金を拠出する「企業型年金」と、加入者自身が拠出する「個人型年金(iDeCo)」の2種類があります。

拠出限度: 条件によって限度額が異なります。

資金の自在性: 原則として60歳まで引き出しができないため、資金の流動性は低いといえます。

運営上の業務負荷: 導入後、企業側は加入者に対する投資教育の実施や事務負担が増加する可能性があります。

運用利回り: 運用実績によって変動します。

加入対象企業の規模: 法人の規模に制限なく加入できます。


(2)確定給付企業年金

概要: 「確定給付企業年金法」に基づくもので、労使が合意した年金規約に基づいて設置される企業年金です。「規約型」「基金型」の2つのタイプがあります。規約型は企業と生命保険会社・信託会社などが契約を結ぶ形であり、基金型は企業年金基金と呼ばれる特別法人を設立して年金資産を管理・運用し、年金給付を行います。

拠出限度: 年金規約による掛金制限があります。

資金の自在性: 脱退一時金があり、年金給付の繰り下げも可能であるため、中程度の自在性があります。

運営上の業務負荷: 毎事業年度ごとの財政検証、情報開示の徹底、財政再計算などが必要となり、企業側の業務負荷は重い傾向にあります。

運用利回り: 原則として確定していますが、見直しされる場合もあります。

加入対象企業の規模: 一部制限があり、特に基金型を設立する場合は、常時雇用従業員が300人以上必要です。


(3)小規模企業共済

概要: 小規模企業の個人事業主や共同経営者、または会社役員が、独立行政法人中小企業基盤整備機構と共済契約を締結し、掛金を納付する制度です。事業を廃止したり役員を退職したりした場合に、機構から共済金が支給されます。

拠出限度: 月額70,000円までと定められています。

資金の自在性: 任意解約が可能であり、貸付制度も利用できるため、中程度の流動性があります。

運営上の業務負荷: 運用は独立行政法人中小企業基盤整備機構が行うため、企業側の業務負荷は比較的軽いといえます。

運用利回り: 確定しており、毎年見直しが行われます。

加入対象企業の規模: 常時雇用従業員20名以下の個人事業主または会社役員が対象です(業種によっては5名以下)。


(4)生命保険を活用した退職金準備

概要: 生命保険を活用することで、死亡保険金および解約返戻金により、死亡退職金と生存退職金の両方を効率的に準備することができます。

保障内容などの設定:

    ◦ 保険金額の自由度が高く、商品種類も豊富であるため、企業のニーズに合わせて細やかに設定することが可能です。

    ◦ 留意点: 被保険者の年齢や健康状態によっては、引受金額が異なったり、加入できない場合もあります。また、保険会社によって保険料、保障内容、解約返戻率などの商品内容に差がある点も注意が必要です。

資金の自在性: 保険種類によっては契約者貸付、内容変更、減額、一部解約などが可能であり、契約の自由度が高いのが特徴です。

    ◦ 留意点: 貸付金には保険会社所定の利息がかかります。また、ご契約から短期間で解約された場合、解約返戻金はごく少額か、全くないことがあるため注意が必要です。

運営上の業務負荷: 運用は保険会社が行うため、企業側の負荷は非常に軽いといえます。

    ◦ 留意点: 引受保険会社の破綻リスクも考慮に入れる必要があります。

加入対象企業の規模: 法人の規模に制限なく加入でき、被保険者は役員1名からでも可能です。

    ◦ 留意点: 特定の役員・従業員のみが加入する場合、給与として個人課税となる可能性もあるため、税務上の取り扱いについては専門家への確認が重要です。


(5)銀行預金

概要: 最も身近で手軽な資金準備方法です。

拠出限度: 資金繰りによるため、特に拠出限度はありません。

資金の自在性: もっとも流動性が高く、必要な時に自由に引き出すことができます。

運営上の業務負荷: 非常に軽く、手間がかかりません。

運用利回り: 確定または変動ですが、一般的には低利回りです。

加入対象企業の規模: 制限はなく、役員1名からでも対応可能です。


4.最適な制度を選ぶための比較ポイント

上記で解説した各制度を検討する際には、「拠出限度の有無」「資金の融通性(自在性)」「導入・運営上の業務負荷」「運用利回り」「加入対象企業の規模」といった項目を総合的に比較することが重要です。

例えば、緊急時の流動性を重視するなら銀行預金や生命保険、運用をプロに任せつつ業務負荷を抑えたいなら小規模企業共済、節税メリットを重視するなら各年金制度など、目的や企業の状況によって最適な選択肢は異なります。複数の制度を組み合わせて、バランスの取れた準備を進めることも有効な戦略と言えるでしょう。


役員退職金準備は、経営者の皆様ご自身の未来、そしてご家族の安心のために非常に重要な経営課題です。今回ご紹介した各制度にはそれぞれメリット・デメリットがあり、企業の状況や個人のニーズに合わせて最適な選択肢は異なります。

一つの制度に限定せず、複数の制度を組み合わせてリスクを分散し、効率的かつ計画的な準備を進めることが、まさかの時や勇退後の生活を豊かにするための鍵となります。ご自身の理想とする未来設計に合致する制度を見つけ、今すぐ準備を始めましょう。



 
 
 

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