退職金制度の正解はどっち?中退共と生命保険、徹底比較で見える「会社と社員を守る」最適解
- 西川 浩樹

- 5 日前
- 読了時間: 5分

中小企業の経営者にとって、従業員の定着や福利厚生の充実は避けて通れない課題です。その中でも、大きな比重を占めるのが「退職金制度」の構築です。退職金制度を維持するための制度選びは非常に難しく、慎重な判断が求められます。
現在、多くの経営者が「ニーズにマッチしている部分が多い」という理由で、「中退共(中小企業退職金共済制度)」を選択しています。しかし、退職金は「従業員の退職」という将来のイベントに備えて長期的に運用していくものであり、企業の状況に合わせた最適な制度設計が不可欠です。
そこで今回は、代表的な選択肢である「中退共」と「生命保険」について、それぞれの特徴を徹底的に比較し、どのような視点で選ぶべきかを解説します。
1. 「中退共(中小企業退職金共済制度)」の強みと注意点
中退共は、厚生労働省が所管する独立行政法人が運営する、国がバックアップする社外積み立て型の退職金制度です。
中退共のメリット
安定した利回り: 掛金を3年7ヶ月以上納付すれば、支払った掛金相当額を上回る退職金が従業員に支払われます。長期加入によるメリットが明確です。
税制優遇: 拠出した掛金は、法人の場合は全額が「損金」、個人事業主の場合は「必要経費」として算入できます。節税効果を得ながら、着実に退職金を準備できるのが魅力です。
中退共の注意点
資金の帰属: ここが生命保険との大きな違いですが、拠出した掛金は決して会社に戻ることはありません。もし会社が共済契約を解約した場合(従業員の同意が必要)でも、解約手当金は会社ではなく、直接従業員に支払われます。
死亡保障の不足: 中退共はあくまで退職金の積み立てを主目的としており、死亡保障を主な目的としていないため、十分な死亡保障を確保することは困難です。
2. 「生命保険」を活用した退職金準備の特徴
一方、民間の生命保険を活用して退職金を準備する手法もあります。これは中退共とは異なる性質を持っています。
生命保険のメリット
万が一への備え: 生命保険の最大の特徴は、加入することで「死亡保障」を確保できる点です。従業員に万が一のことがあった際、遺族への保障として機能します。
資金の柔軟性: 生命保険の場合、将来の生存退職金の原資となる解約返戻金は「会社に帰属」します。これにより、会社の資金繰りや経営状況に応じた柔軟な活用が検討可能です。
商品選択の幅: 商品の種類によっては解約返戻金があるため、目的や期間に応じた多様なプランニングが可能です。
生命保険の注意点
経営破たんリスク: 民間企業のサービスであるため、保険会社の経営破たんリスクを考慮する必要があります。
返戻率の制限: 多くの場合、解約返戻金は払込保険料の総額を下回ることがあります。中退共のように「3年7ヶ月で元本以上」といった確実性とは異なる側面があります。
複雑な経理処理: 生命保険料の経理処理は、保険の種類や最高解約返戻率に応じて、資産計上期間や金額、取り崩し期間が細かく決まります。
3. 中退共と生命保険:比較表で見る違い
経営判断の参考として、中退共と生命保険の主な違いを整理します。
比較項目 | 中退共 | 生命保険 |
運営主体 | 国(独立行政法人) | 民間保険会社 |
死亡保障 | 確保が難しい | 確保が可能 |
資金の帰属先 | 必ず従業員に支払われる | 会社に帰属する |
解約手当金 | 従業員に支払われる | 会社に支払われる |
税務上の扱い | 全額損金(法人の場合) | 商品種類により異なる |
主なリスク | 会社の資金として活用不可 | 保険会社の破たんリスク |
4. どちらを選ぶべきか?最適な制度設計のために
退職金制度を導入・見直す際には、どちらか一方に絞るのではなく、「企業の現状分析」から始めることが重要です。
例えば、「確実に従業員の老後や退職後の生活を守りたい」という目的が強いのであれば、国の制度である中退共がベースとなるでしょう。一方で、「従業員の万が一の保障も手厚くしたい」「将来的な資金の流動性を会社に残しておきたい」と考えるのであれば、生命保険の活用が有力な選択肢に入ります。
また、これらを組み合わせて活用する企業も少なくありません。ただし、制度設計にあたっては、以下の点に注意が必要です。
現状分析の徹底: 自社のキャッシュフローや、将来必要となる退職金の総額をシミュレーションし、慎重に対応する必要があります。
最新の制度確認: 法令や制度、税制は変更される可能性があります。検討時点での最新情報を確認しましょう。
専門家への相談: 具体的な経理処理や税務判断については、税理士などの専門家、または所轄税務署に相談することをお勧めします。
退職金制度は、経営者から従業員への「感謝の形」であると同時に、会社の財務にも大きな影響を与える経営課題です。
中退共は「着実な積み立てと全額損金」という安心感があり、生命保険は「死亡保障と資金のコントロール性」という機能性があります。どちらが優れているかではなく、「自社にとって、そして従業員にとって何が最善か」を長期的視点で判断することが、強い会社を作る第一歩となります。
まずは自社のニーズを整理し、専門家のアドバイスを受けながら、将来にわたって持続可能な制度設計を目指しましょう。
注:この記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の商品の募集を目的としたものではありません。具体的な検討にあたっては、契約概要や注意喚起情報、約款等を必ずご確認ください。また、記載されている税務等の情報は作成日時点のものであり、将来変更される可能性があります。




コメント